70年代のギブソンにおいて最も人気のなかった機種のひとつ、それが本機マローダーです。
ライバルメーカー、フェンダー社の売上の「略奪者」となるべく登場したものの、箸にも棒にも…となった事で知られており、余剰在庫は、ポール・スタンレーがステージ・パフォーマンスの中でしばしば破壊する為に供給されたというのも有名なエピソードです。
ギブソン的とは言い難い、メイプル・ボディとネックによる硬質なトーンを基とし、ビル・ローレンスによるクリアーなPU がその特徴にさらに輪を掛ける結果となり、この楽器はかなりチャキチャキなのが特徴でした。ロー・ノイズなところはこの楽器の美点です。当時のロック・ギターとしては、あまりマッチしなかった事は想像に難しくありません。
そういう訳か、フロントPU は、ディマジオの X2N® [DP102] に交換されています。ディマジオの PU の中でもかなり高出力な方で、脱チャキチャキを狙ってのものと思われます。フロントPU にするにはパワーありすぎだろ!って突っ込まれてしまうかもしれません。
その他の点ですが、本機は年式なりの使用感はあるものの、粗雑に扱われがちだったマローダーとしてはなかなかのコンディションです。各部調整機構は問題なく機能します。透明な樹脂でモールドされたビル・ローレンスのデザインによるリアPU はハウリングに強く、ローノイズで、ハイパワーなフロントPUとの混み合せは個性的です。
更にこのこの個体は、PUセレクターがトグルSWでなく、バランサーになっています。いわゆる1軸2連のバランサーポットでなく、「2番から出力するタイプ」のブレンダーなので、中央あたりのロスが大きく、音量が下がってしまいます。
それがハイパワー(過ぎる)なフロントPUに、ちょうど良いという話もあり、トータルで見て、案外使い易いギターに仕上がっています。
使用感のあるギブソン製のソフトケース付属